幾年経っても（00:04:11 - 00:04:12）
【ASMR/3dio】睡眠導入/読み聞かせ/朗読：時計のない村【クッコロ・セツ / Vtuber】

00:00:01 - 00:00:04： 時計のない村小川 00:00:07 - 00:00:09： 遠く離れた田舎のことであります 00:00:09 - 00:00:11： その村にはあまり 00:00:11 - 00:00:14： 富んだものがありませんでした 00:00:14 - 00:00:17： 村中で時計がたった2つ切りしかなかった 00:00:18 - 00:00:22： 長い間この村の人々は時計がなくて済んで 00:02:12 - 00:02:13： きました 00:00:24 - 00:00:27： 太陽の上り具合を見ておよその時刻を測り 00:04:29 - 00:04:31： ました 00:00:30 - 00:00:34： けれどこの文明の世の中に時計を用いなく 00:00:34 - 00:00:37： ては話にならぬというので 00:00:37 - 00:00:39： 村の中での金持ちの一人が 00:00:39 - 00:00:42： 街に出た時にその町の時計屋から一つの 00:00:42 - 00:00:45： 時計を求めたのであります 00:00:45 - 00:00:49： その金持ちは今自分はたくさんの金を払っ 00:00:49 - 00:00:53： て時計を求めることを心の中で誇りとし 00:00:54 - 00:00:55： 今日から 00:00:55 - 00:00:57： 村の者たちは 00:00:57 - 00:01:00： 万事の集まりや約束の時間をこの時計に 00:01:00 - 00:01:02： よってしなければならぬと思ったからで 00:01:02 - 00:01:05： あります 00:04:09 - 00:04:11： この時計は 00:01:07 - 00:01:10： 狂うようなことはないだろうな 00:01:10 - 00:01:15： と金持ちは時計屋の番頭に尋ねました 00:01:16 - 00:01:19： 狂うようなことはありませんそんなお品で 00:01:19 - 00:01:21： はございません 00:04:14 - 00:04:20： と番頭は答えました 00:01:24 - 00:01:27： それなら安心だが 00:01:27 - 00:01:31： と金持ちは微笑みました 00:01:31 - 00:01:36： この店の時間は間違いがないだろう 00:01:36 - 00:01:40： なと金持ちはまた聞きました 00:01:40 - 00:01:43： 決して間違ってはいません 00:01:43 - 00:01:45： 標準時に合わせてございます 00:01:49 - 00:01:52： それなら安心だ 00:01:52 - 00:01:55： と金持ちは思ったのであります 00:01:55 - 00:01:59： 金持ちは買った時計を大事にして自分の村 00:01:59 - 00:02:04： へ持って帰りました 00:02:04 - 00:02:07： これまで時計というものを見慣れなかった 00:02:07 - 00:02:09： 村の人々は 00:02:09 - 00:02:12： 毎日のようにその金持ちの家へ押しかけて 00:02:13 - 00:02:17： そしてひとりでに動く針を見て不思議に 00:02:17 - 00:02:19： 思いました 00:02:19 - 00:02:23： また金持ちから時間の見方を教わって彼ら 00:02:24 - 00:02:28： 畑に行っても山に行ってもよると時計の話 00:02:28 - 00:02:31： をしたのであります 00:02:31 - 00:02:35： この村にもう一人金持ちがありました 00:02:35 - 00:02:36： その男は 00:02:36 - 00:02:39： 村の者が一方の金持ちのうちにばかり 00:02:39 - 00:02:40： 出入りするのを 00:02:40 - 00:02:42： 妬ましく思いました 00:02:42 - 00:02:45： 時計があるばかりにみんながそのうちへ 00:02:45 - 00:02:46： 行くのが 00:02:46 - 00:02:50： 癪に触ったのであります 00:02:50 - 00:02:53： どれ俺も一つ時計を買ってこよう 00:02:53 - 00:02:58： そうすればきっと俺のところへもみんなが 00:02:58 - 00:03:01： やってくるに違いない 00:03:01 - 00:03:03： きっとその男は思ったのです 00:03:03 - 00:03:05： 男は 00:03:05 - 00:03:08： 町へ出ましたそしてもう一人の金持ちが 00:03:08 - 00:03:10： 時計を買った店と 00:03:10 - 00:03:12： 違った店へ行きました 00:03:12 - 00:03:14： その店も 00:03:14 - 00:03:17： 街での大きな時計屋であったのです 00:03:17 - 00:03:21： 男はいろいろの形の時計をこの店でみまし 00:03:22 - 00:03:30： なるたけ珍しいと思ったの男は選びました 00:03:30 - 00:03:34： この時計は車ないだろうか 00:03:34 - 00:03:38： と男は店の番頭に問いました 00:03:38 - 00:03:41： そんなことは決してございません保険付き 00:03:41 - 00:03:43： でございます 00:03:46 - 00:03:50： その時計の時間は合っているだろうか 00:03:50 - 00:03:54： と男は尋ねました 00:03:54 - 00:03:57： 標準時にあっています 00:04:00 - 00:04:03： ネジさえかけておけばいつまでたっても 00:04:03 - 00:04:05： 間違いはないだろうか 00:04:05 - 00:04:09： と男は念のために問いました 00:04:11 - 00:04:12： 幾年経っても 00:04:12 - 00:04:14： 狂うようなことはございません 00:04:20 - 00:04:23： 男はこれを持って帰れば 00:04:23 - 00:04:25： 村の者たちがみんな身にやってくると思っ 00:04:25 - 00:04:29： てその時計を買って大事にして村へ帰り 00:04:31 - 00:04:34： もう一人の金持ちが別の時計を街から買っ 00:04:34 - 00:04:37： てきたという噂が村に立つと 00:04:37 - 00:04:40： 果たしてみんながやってきました 00:04:40 - 00:04:44： 時計をどうぞ見せてください 00:04:44 - 00:04:46： と村の者たちが 00:04:46 - 00:04:48： 口々に言いました 00:04:48 - 00:04:51： 男はそう言ってくるだろうと思っていた 00:04:51 - 00:04:54： ところへみんながやってきましたから得意 00:04:54 - 00:04:56： になって 00:04:56 - 00:05:00： さあ上がってみなさいなかなか機会のいい 00:05:00 - 00:05:03： 時計なんだからこの時間ばかりは安心して 00:05:03 - 00:05:05： いいのだ 00:05:05 - 00:05:10： と男は言いました 00:05:10 - 00:05:13： 村の者たちは時計の形が変わっていました 00:05:16 - 00:05:19： いやーこれは珍しい 00:05:19 - 00:05:23： と言ってその時計の前に頭を集めてほめそ 00:05:23 - 00:05:25： やしました 00:05:25 - 00:05:27： 彼に不思議なことには 00:05:27 - 00:05:30： 村に二つ時計がありましたがどうしたこと 00:05:30 - 00:05:32： か2つの時計は 00:05:33 - 00:05:37： 約30分ばかり時間が違っていました 00:05:37 - 00:05:40： どちらが違っているのか誰もそれを知る 00:05:40 - 00:05:44： ことができないのであります 00:05:44 - 00:05:47： この時計は狂っていない 00:05:47 - 00:05:49： 標準時に合っているのだ 00:05:49 - 00:05:53： ずっと一人の金持ちが言いますと 00:05:53 - 00:05:55： この時計こそ合っているのだ 00:05:55 - 00:05:57： 上等の機械で 00:05:57 - 00:05:59： 町の時計にちゃんと 00:05:59 - 00:06:02： 合わしてきたのだ 00:06:02 - 00:06:06： と他の金持ちが言いました 00:06:06 - 00:06:08： 二人の金持ちは 00:06:08 - 00:06:11： 互いに自分の時計を正しいと言って譲り 00:08:51 - 00:08:54： ませんでした 00:06:13 - 00:06:15： ちょうど二つの時計は 00:06:15 - 00:06:17： 厳かな掟のように 00:06:17 - 00:06:21： 村のものは二つに分かれて一方は甲の 00:06:21 - 00:06:23： 金持ちの時計を正しいと言いました 00:06:24 - 00:06:25： 一方は 00:06:25 - 00:06:29： 乙の金持ちの時計を正しいと言いました 00:06:29 - 00:06:32： 今まで平和であった村が時計のために二つ 00:06:32 - 00:06:34： に分かれてしまいました 00:06:34 - 00:06:39： 時計は神様のようになってしまったのです 00:06:39 - 00:06:42： 今夜6時から集まる 00:06:42 - 00:06:46： と言い合わしても一方のものは 00:06:46 - 00:06:48： 乙の金持ちの時計が6時になると会場に 00:06:48 - 00:06:52： 集まりましたが一方のものは 00:06:52 - 00:06:54： 河野金持ちの時計が6時にならないので 00:06:54 - 00:06:59： 集まりませんでしたそれで30分あまりも 00:06:59 - 00:07:02： 2つの時計の時間が違っていましたから前 00:07:02 - 00:07:06： に集まったものは後から来たものに対して 00:07:06 - 00:07:11： 待たされた小言を言いました 00:07:11 - 00:07:14： 俺たちはちゃんと6時に来たのだこちらの 00:07:14 - 00:07:18： 時計に狂いはないはずだそれはお前さん 00:07:18 - 00:07:21： たちの時計が間違っているからだ 00:07:21 - 00:07:26： と後から来たものは言いました 00:07:26 - 00:07:29： いいや私たちの方の時計は間違っていない 00:07:29 - 00:07:32： お前さんたちの方の時計こそ間違っている 00:07:34 - 00:07:38： と前に集まったものが言いましたこうして 00:07:38 - 00:07:40： 時計によって 00:07:40 - 00:07:43： 双方が争ったのです 00:07:43 - 00:07:45： 待ってやって 00:07:45 - 00:07:47： 理屈を言われるようじゃつまらない 00:07:47 - 00:07:50： さっさと時間が来たら仕事を始めてしまう 00:07:50 - 00:07:52： がいい 00:07:52 - 00:07:55： と早い時間を信じる組は 00:07:55 - 00:07:58： 遅れた時間を信ずるものに構わずに相談を 00:07:58 - 00:08:03： 進めるようになりました 00:08:03 - 00:08:05： こんなようなことで 00:08:05 - 00:08:07： 常に時間から 00:08:07 - 00:08:10： 双方の争いが絶えませんでしたそのうちに 00:08:10 - 00:08:12： ふとしたことから 00:08:12 - 00:08:16： 乙の方の時計が壊れてしまいました今まで 00:08:16 - 00:08:20： 毎日回っていた針が全く動かなくなって 00:08:20 - 00:08:21： しまったのです 00:08:21 - 00:08:25： 神様のようにその時計の時間を信じていた 00:08:25 - 00:08:29： 乙の方の組はその日から真っ暗になった 00:08:29 - 00:08:32： ように全く時間というものがわからなく 00:08:32 - 00:08:33： なりました 00:08:33 - 00:08:37： そうかと言って今まで争っていた甲の方へ 00:08:37 - 00:08:39： 行って時間を聞くのも 00:08:39 - 00:08:42： 恥と感じましたから 00:08:42 - 00:08:46： 俺たちにはもう時間がないのだ 00:08:46 - 00:08:48： と言って 00:08:48 - 00:08:51： 村の相談があっても時刻が常にまとまり 00:08:54 - 00:08:58： こうの組はさすがに自分たちの方の時計は 00:08:58 - 00:09:02： 狂わない正しい時計だといよいよその時計 00:09:02 - 00:09:05： のありがたみを感じたわけです 00:09:05 - 00:09:06： こうなれば 00:09:06 - 00:09:10： 乙の組のものもこちらに従わなければなら 00:09:10 - 00:09:13： ぬと思っていましたそれで 00:09:13 - 00:09:16： 相談があるときは 00:09:16 - 00:09:18： 午後6時より 00:09:18 - 00:09:20： というように時間を決めて 00:09:20 - 00:09:22： 乙の方へ通知をいたしました 00:09:22 - 00:09:26： けれど時計を持たなくなった乙の方は6時 00:09:26 - 00:09:29： がいつであるかわかりませんこんなことで 00:09:30 - 00:09:33： いつも相談が捗りませんでした 00:09:33 - 00:09:37： 時計が2つあった時よりも一つになった時 00:09:37 - 00:09:38： の方が 00:09:38 - 00:09:42： 村のまとまりがつかなくなったのです 00:09:42 - 00:09:43： 甲の方も 00:09:43 - 00:09:46： 案外乙の方が自分たちに従ってこないのを 00:09:46 - 00:09:47： 知ると 00:09:47 - 00:09:52： 困ってしまったのです 00:09:52 - 00:09:55： 町へ行って時計を直してこなければなら 00:09:57 - 00:10:00： 乙の方の一人が言いました 00:10:00 - 00:10:03： 直したって仕方がない 00:10:03 - 00:10:05： 壊れるような時計はもう 00:10:05 - 00:10:08： 信用することができない 00:11:25 - 00:11:28： と他の一人が言いました 00:10:12 - 00:10:16： そうすればどうしたらいいのか 00:10:16 - 00:10:18： 壊れないいい時計を探してくるより仕方が 00:10:20 - 00:10:23： そんないい時計はどこへ行ったら見つかる 00:10:23 - 00:10:25： だろうか 00:10:26 - 00:10:28： 乙の方は夜と集まると 00:10:28 - 00:10:34： 口々にその話をしたのであります 00:10:34 - 00:10:36： 乙の金持ちは 00:10:38 - 00:10:40： 酒がよく作れたら 00:10:40 - 00:10:43： 遠い町へ行っていい時計を買ってこよう 00:10:43 - 00:10:45： と言いました 00:10:45 - 00:10:50： そうしてるうちにふとある日のこと 00:10:50 - 00:10:54： 甲の方の時計も壊れてしまったのです 00:10:54 - 00:10:57： 自分たちの方の時計は決して狂うことは 00:10:57 - 00:10:59： ないと言って 00:10:59 - 00:11:02： 威張っていましたがついにその甲の方の 00:11:02 - 00:11:03： 時計も 00:11:03 - 00:11:07： 壊れてしまったのです 00:11:07 - 00:11:11： やはり時計なんかというものはダメだすぐ 00:11:11 - 00:11:13： に壊れてしまう 00:11:13 - 00:11:16： 信用のできるものではない 00:11:16 - 00:11:19： と一人が言いますと 00:11:19 - 00:11:23： 時計があったってなくたってこの一日には 00:11:23 - 00:11:25： 変わりがないじゃないか 00:11:28 - 00:11:30： こうのほうでは 00:11:30 - 00:11:32： 乙の方の時計も壊れてしまったのだから 00:11:34 - 00:11:37： 急いで新しい時計を 00:11:37 - 00:11:40： 街へ行って求める気にもなりませんでした 00:11:40 - 00:11:44： 乙の方でもこうの方の時計が壊れたと聞い 00:11:44 - 00:11:46： て今更 00:11:46 - 00:11:48： 街へ行って新しい時計を求めるという 00:11:48 - 00:11:51： 気持ちが起こりませんでした 00:11:51 - 00:11:54： 村はいつしか時計のなかった昔の状態に 00:11:54 - 00:11:56： 帰ったのです 00:11:58 - 00:12:02： 頼るべき時計がないと思うとみんなはまた 00:12:02 - 00:12:05： 昔のように大空を仰いで 00:12:05 - 00:12:07： 太陽のあがり具合で時間を計りました 00:12:07 - 00:12:12： そしてそれは少しの不自由をも彼らに感じ 00:12:12 - 00:12:14： させなかったのです 00:12:14 - 00:12:16： 時計が壊れても 00:12:16 - 00:12:19： 太陽は決して壊れたり狂ったりすることは 00:12:19 - 00:12:23： ありませんでした 00:12:23 - 00:12:26： 時計なんかいらないお天道様さえあれば 00:12:26 - 00:12:29： たくさんだ 00:12:29 - 00:12:31： と言ってみんなは初めて 00:12:31 - 00:12:33： 太陽をありがたがりました 00:12:33 - 00:12:36： そして集会の時刻も 00:12:36 - 00:12:38： 太陽の周りくらいで決めましたために 00:12:38 - 00:12:42： みんなはまた昔のように一致していつと 00:12:43 - 00:12:48： 村は平和に収まったということであります